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てのひらから
幻:赤毛...2005.09.16 Fri
てのひらからこぼれおちるもの

だれかのいのち

きみのあか


まもりたいなんて、ゆめのまたゆめ――・・・



・てのひらから・


陽に透かした自分の手のひらを暫く見つめて、目を閉じる。
季節は春。暖かな陽射しは惰眠を貪るには持って来いだ。
穏やかな時間の中、柔らかな風に吹かれる草原に寝転がるのは心地が良い。
不在に気付いた誰かが呼びに来るまでの、ほんの一時。
貴重な時間を、趣味の昼寝に充てようと思うのに・・・。

「っくしょ・・・何だってアイツの事なんざ・・」

眩しさに手を翳した。たったそれだけの事。
なのに、陽に透けた自分の掌に。その奥の、流れる血に。
否応無く、今此処には居ない人物を思い出してしまう。
同じ血の流れを有する者。
同じ血を流す才を持つ者。
この手も、あの手も。
己の手で戦場という舞台に赤い花を咲かせる為の糸引く血統に生れた時代の隠者。
自分などよりも、色濃く血族の才と志を継ぐ唯一人の兄。
ただ、ひとりの・・・。

「・・・・・・・・・アホくせ・・」

思考を振り払うように寝返りを打つ。
先程とは打って変わって、視界に広がるのは緑。
その、色。
見たくなくて、また目を閉じる。
無駄な事と知っていながら。

逃げたって、何も変わらない事を知っている。
振り払ったって、考える事を止められる筈も無い。
それが性だ。
やっかいで、けれど、愛おしい。
そして、何より忌まわしい性。
この脳が考える事を本当の意味で放棄する事はありえない。
血がそうさせるのか、育った環境故なのか。
常に、状況を把握しようと思考は巡る。
答えを出さないままにはしておけない。
導き出した答えのその先の先、更に先。
留まる事の無い思考の流れは、あらゆる状況・仮定・過程・対処法を弾き出す。
生きている限り、例え無意識にでもソレを繰り返す。
これは、歴史を導く為の力。
そして、人を殺める為の力。
止まらない思考。
この性は、確実に誰かの命を奪う。
考える事で、それを口に出す事で。
自分は安全な場所に居ながら人を殺せる。
簡単に、あっけなく。
敵も味方も、紙切れ一枚の上で消えていく。
この手が本当の血に濡れる事は無い。
けれど、この手は真実血に染まっている。
間違いなく、兄の手も。
差なんて無い。
目の前の葉のように、自分達は表裏一体なのだから。
違うように見えて、その実、根本は同じ。
自分が陽に照らされた緑ならば、兄はその裏側。
陽の当たらない陰の緑。
裏返せば、たちまち互いの色は逆転する。
綺麗事だと知って、それでもそれにしがみ付くか。綺麗事と切り捨てて、機械的に務めるか。
自分はまだ捨てられない。
否、捨てられない振りをしているだけかもしれない。
冷酷だと責めながら、同じ事をこの脳は弾き出す。
ただ、それを選ぶか否かの差。
その差だけが、互いの色を違えている。
その差を埋めれば、追い付ける事を知っている。

「・・・・・・・なさけねぇのな・・」

呟いて、自嘲に頬を歪める。

分っているんだ。
ずっと前から知っている。
何だかんだと並べ立てている事が、言い訳だという事を。
理由をつけて、はぐらかしているだけだ。
自分の心の奥底、本音から目を逸らしているだけ。
認めれば良い。そうすれば余計な理由を考えなくても済んで楽になれる。
認めてしまえ。
追い付いてしまうのが、怖いだけだという事を。
誰かにどうみられるか、じゃなくて。
追い付いたその時、アイツがどう思うか。
それが、堪らなく怖いだけだと。

追い付く為の手段に、戸惑いなんてありはしない。
ただ追い付くだけなら簡単だ。
その為の術は、頭の中に叩き込まれている。
けれど、それを選ぶ事にブレーキが掛かる。
罪悪感なんかじゃない。もっと、自分勝手で反吐が出るような理由だ。
兄と並ぶ事を、同じ視点でものを見る事を。
他の誰でもない、兄自身が望んでいない。
だから、その先。追い付いた先に、アイツから向けられる視線が怖い。
アイツが望んでいるのは、箱庭でまどろんでいた頃の小さな自分だ。

彼が変化を望まない、だから、自分は捨てられない。

勝手だ。
どっちも、酷く自分勝手だ。
馬鹿な兄の為に捨てられない自分も。
馬鹿な弟の為に捨ててしまった兄も。
根本の理由は、全く同じなのに。
選び取った手段が違うだけで、こうも擦れ違う。
欲しいのに、欲しいから、手に入らない。
伸ばした手で掴み取るためには、アイツの望まないラインを超えて変わらなければいけない。
けれど、それは失うのと同意だ。
だから、動けない。
変われない。

「アホくせ・・・」

目を開いて、目の前の草原を眺める。
広がる緑。
連想する、緑玉。
いつになったら、この終わりの無い鬼ごっこは終わるのだろう。
一つ・・・二つだけ、方法を知っているけれど。

追い付けないと知っていても、追い掛ける事はやめられない。

もう一つ、それをさせない為に、自分は追い掛け続ける。

何が出来るわけでも無いけれど。
この掌からどれ程の命が零れ落ちても、たった一人だけは。
守れるなんて自惚れては居ないけど。
けれど、せめて。
もしものその時、この身を盾とする事も厭わない。
それが無理なら、せめて。
せめて、その最後を、看取らせて・・・・。




・終わったれ・

書いてる内に良く分からない方向に走って行くのはいつもの事ですが。
今回はいつにも増して大暴走。ガードレールを突っ切って崖下に転落していきました・・・と、さ。
こんなんシーザーじゃないよ!!!(お前が書いたんだろ
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楽園に降る雨
幻:赤毛...2005.08.11 Thu
真綿に包まれるように、柔らかな場所で守られていた。


幼い頃の記憶は、引き攣るように痛む。
心の中に、消えずにずっと。
痛いと、認めるのも癪で。
瞼の裏にチラつく赤を、振り払えないのはきっと自分の弱さ。
馬鹿みたいだと、笑う。
馬鹿みたいだ。
アイツは、自分を思い出しもしないのだろうに。
こんな痛みは、きっと自分しか感じていない。
本当に、馬鹿みたいで。
無意識に掴んだ胸は、まだ、痛い。



「…雨…か」

嫌な天気だと苦く呟く。
ただでさえ欝なのに、余計に気分が落ち込んでいく。
降り注ぐ雨は、戦場を洗い流し、清めていくけれど。
視界が悪くなれば、それだけ状況が掴みづらくなる。
足場が悪くなれば、それだけ隙が出来てしまう。
それはあちらとて同じ。
地の利と、智の利が物を言う。
地の利は五分。
けれど、智の利はきっとあちらの方が上。
どうしても埋められない差を、嫌という程思い知っている。
縮まらない差に苛立つ自分に更に苛立ちが募る。
また痛みがぶり返す。
思考が纏まらない。
舌打ちをして、灰色の空を睨んだ。

「ホント…やな天気…」

雨は、アイツが出て行った日を思い出す。
灰色の空は別れの兆し。
降り注ぐ雨は、決別の象徴。
瞼にチラつく赤はまだ消えない。
こんな日に限って、向こうにはアイツが居る。
雨が、降っているのに。
こんなに視界が悪くちゃ、その姿を確認することだって出来やしない。
無事か…どうかなんて。

「馬鹿か俺は…」

敵の心配をしてどうするんだ。
自分の立場を忘れるな。
いざとなれば、その命を奪う命だって出さなきゃいけないんだ。
痛みなんて、気付かない振りで。
そんな事…。

「……出来るわけ…」

呟いた声は、雨に吸い取られていく。
誰にも届かない。
届いては、いけない。
きつく目を閉じる。
一度だけ、その名を口の中で呟いて。
次に目を開ける時は、前だけを見つめて。
今の自分は、この軍を勝利に導く事だけを。

「―――全軍、進撃開始…!」

あぁ、それでも。
これから流れる沢山の命の色の中に、お前の赤が無ければ良いと願う…。




雨の日は、別れの日。
唐突に楽園が失われたあの日も、今日の様に冷たい雨が降っていた。




「シー、ザー…?」

あぁ、なんて間抜けな顔してんだか。
いつもの無表情はどうしたんだよ。
アンタらしくない。
笑っちまうじゃないか。

「…ばー‥か…」

ホント、馬鹿。
救いようが無いよ、アンタ。
何、諦めてんだよ。
何で、避けようとしなかったんだよ。
あんまりにも馬鹿みたいにボーっと突っ立ってるから、思わず前に飛び出しちまったじゃねーか。
何なんだよその間抜け面は。
俺が、こんな事するなんて思ってなかった?
残念だったな。
まだ、終わらせてやらないよ。
楽に終われるなんて、思わないでよ。

「何故…」

「…なぁ……いたい…?」

何故なんて、当たり前の事を聞くから。
笑ってしまう。
実際に、笑えたかどうかは知らないけど。
なぁ、痛いか?
アンタの胸は、痛みを感じてる?
あの日から、俺の胸を苛んでる痛みをくれたお前は、今、痛みを感じたんだろうか。
俺だけ痛いなんて、不公平だろ?
あの日から、ずっと痛かったんだ。
ずっとアンタを想ってた。
馬鹿みたいに、あんたが壊した日々を、心の奥に抱いて。
知らなかっただろう?
これから先も、知らないだろう…。
だって、俺は言わずに行くから。
アンタが何も言わずに出て行ったように。
俺も、何も言わないよ。
一生、答えの与えられない問題に、少しでも悩んでくれれば良い。
小さな、棘になれば良い。

「‥ずっと……」

痛めば、良いのに‥。



雨の日は、別れの日。
あの日楽園に降っていた雨は、
今、花散る戦場に降り注ぐ。
胸は、もう痛まない――…。






昔の日記に書いてたのを引っ張り出し・・・。
自分で自分を辱めてどうするよ・・・orz
死にネタですんませ・・・orz
受けが攻めを庇うのが好きなの!!(開き直った)
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