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犬と王子2
幻:カ王...2006.02.28 Tue

「王子ぃ~」

「うん?」

「えっと、あの、楽しい…ですか?」

「うん」

戸惑いがちに訊ねた問いは、笑顔と言葉の肯定で返された。


・犬と王子・


この年の男子にしては細い指が器用に金糸を編んでいく。
吐息が触れそうな距離に、先程から心臓は大忙しだ。
椅子に座っている自分と、その横に立っている相手とでは視線の位置も普段とは逆で、それが更に脈の加速を手伝っている。
上から見下ろすと綺麗な人は、下から見上げてもやっぱり綺麗だった。
普段は髪等に隠れてよく見えない細い首が目の前にあって、喉のラインには何とも言えない色気がある。

   噛み付きたい…。

思わず浮かんだ言葉に、慌ててブンブンと首を振る。
勿論、心の中で、だ。
何せ今は首を振るわけにはいかない状況である。
折角編んだのに解けたと怒られる事は無いと思うが、何より楽しそうに髪を編んでいる王子の邪魔をしたくない。
自分などの髪で楽しんで貰えるなら、如何に心臓に悪かろうが喜んで大人しくしていよう。
後から後から湧き出てくる欲望だって、理性で抑えて見せますとも。

グッと拳を握って決意を固める。

これもやはり心の中で、だが。


「カイルの髪って、綺麗だね」

そう言って微笑む貴方の方が余程綺麗です。
即答しそうになるのを慌てて抑えて、言葉を付け足して音にする。

「そうですか?俺は王子の髪の方がよっぽど綺麗だと思いますけど」

「あはは、ありがと」

あぁ、本気にされてない。
サラサラと流れる青銀の髪は、本当に心の底から綺麗だと思っているのに。
普段からの軽い言動が災いしてか、心からの言葉も社交辞令としてしか受け取って貰えないらしい。
自業自得とは言え、切ないものがある。
確かに女性と見れば甘い言葉を囁くのは己の癖のようなものだが、本当に想っているのはたった一人なのに。

尤も、それは気付かれてはいけない事なのだけれど。

それでも、日増しに強くなる想いは気付いて欲しいと騒ぐ。
好きだと言ってしまいたい衝動に駆られる。
それら全てを理性を総動員して抑えているのに。

「本当に、綺麗」

貴方が、微笑んで髪に口付けたりするから。


   あぁもう、これ以上自分を虜にして、貴方は一体俺をどうする気ですか。


理性が陥落する日はそう遠くないかもしれない。



・了・

未カップルで犬視点。
アビスのジェイルクでも書いてますが、髪ネタ大好きです。
私の中で髪の毛って心を許した相手にしか触られたくないという前提があるので。
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犬と王子1
幻:カ王...2006.02.28 Tue

   尻尾が見える…。

とは言っても、実際にそこに生えている訳ではない。
訳では無いのだが、何故か無いはずのものが見えてしまうのだ。
それは偏に、この男の纏う雰囲気故だろう。

現在、その無い筈の尻尾はパタパタと嬉しげに揺れている。
理由は明白。
でかいナリをした犬の視線の先には、愛しのご主人様が居るからだ。
尤も、この犬の本来の主人は別の人物の筈なのだが。
こうもあからさまだと、友の犬に対する異常だと思えた警戒も頷ける。
大事な息子が国一番と言っても差し支えの無いプレイボーイに目を付けられたとあっては、警戒しない方がおかしいだろう。
だが、様子を見るに彼が心配しているような事態が起こる可能性は低そうにも思える。
何故なら、犬は主を本当に大事に思っているように見えるからだ。

それこそ、触れる事すら躊躇うほどに。


「…意外とヘタレた犬だな」

呟いた言葉は駆け出した犬には届いていないだろう。
視線の先では勢いよく駆け寄った犬に主の護衛が天誅を喰らわしていた。
中々面白い見世物である。
友には悪いが、妨害するよりも静観する立場の方が楽しそうだと判断を下す。


「これは暫く退屈しなくて済みそうだ」







短。
えーと、ゲオルグさん視点、かな?
犬って言うのはカイル氏の事です。
日記でも言ってますが、私には彼が犬に見えるので。
きれいなひと
幻:カ王...2006.02.28 Tue
笑う顔がきれい

困った顔がきれい

纏う空気がきれい

澄んだ瞳がきれい

俺の名前を呼ぶ声がきれい

硝子細工のような、何もかもがきれいなひと




・きれいなひと・




「また俺は留守番ですよー。今度こそは一緒に行きたかったのになぁ」

ちぇーっと拗ねてみせれば、目の前の人はクスクスと笑って。

「仕方ないよ、カイルは母上とリムを守るのが仕事。でしょ?」

ちょっと首を傾げて、覗き込むようにして真っ直ぐ見上げてくる蒼い瞳。
通常抱く青のイメージと違って、ちっとも冷たさなんて感じさせない柔らかい色。
それはきっと、この人だからだ。
穏やかで、優しくて。
周りの馬鹿な貴族連中に陰で何を言われても、いつだって穏やかに微笑んでる。
辛いなんて素振り、ちっとも見せないで。

綺麗な綺麗な王子様。
俺の、大切な大切な、何より守りたい人。
本当は、誰より傍で貴方の盾になりたいのに。
冗談みたいに王子の事が好きだと言って以来、何でか閣下が目を光らせていて必要以上に近寄らせて貰えない。

  あの人も結構親馬鹿だからなぁ…。

我ながら馬鹿な事をしてしまったとちょっと…いや、激しく後悔。
いつも傍に居る彼女が、ちょっと羨ましい。

「王子」

「うん?」

訂正。
いつもこの笑顔を向けられてる彼女が、かなり羨ましい。

「気をつけて行って来て下さいね」

「うん、大丈夫。ありがとう」

きれいな笑顔。
この笑顔が守れるなら、何だってするって思う。
貴方が笑っていてくれるなら、この気持ちだって一生告げずに抱えていく。

「本当に、気をつけてくださいよ。そんで早く帰ってきて下さい」

王子がいないと俺寂しくて死んじゃいますから。
情けない顔をして言えば、また冗談ばっかりって楽しそうに貴方が笑う。
本当は、冗談なんかじゃないんですよ。とは、言えないけど。

出来るだけ、早く帰ってきて下さい。
無事な姿を見て、安心させて。
そしてまた、こんな他愛も無い話をして、少しでも傍に居させてください。


祈るように、笑った。



・了・

初めてのカイル×王子がコレです、か…orz
もうひたすらに王子好き好き大好きなカイル。
そしてそれに気付いてない振りをする王子。
そして更にそれに気付いてるカイル。
そんでもって気づかれてる事に気付いてる王子。
そんな、カイル→←王子が、好きです。
一方通行両想い万歳。
惜しむらくはそれをあらわせない私の文才の無ささー!(泣
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