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賢者と少年
幻:坊主...2005.09.07 Wed
のぞいてごらんよ、そのあなのなかを。


深くローブを被った男が言う。
草も生えていない、荒れ果てた地で。辺りは濃い霧が覆い、視認出来るものといえば、自分と、両の足が立つ地と、目の前の人物。
そして、その人の足元にある、ポッカリと口を開けた黒い穴だけ。
薄汚れたローブを纏った男が、手にした棒でその穴を指す。
覗いてご覧、と。
男がどんな顔をしているのか、どういうつもりでその穴を覗けと言うのか。
ただ立ち尽くす少年には皆目見当もつかない。
けれど、抗い難い何かが、男の声には宿っていて。
迷うように、一歩を踏み出す足が揺れる。

このまま男の言葉に従っても良いのだろうか。
あの穴を覗いた時、何かが起こるのではないだろうか。

そんな少年を、男はローブに隠された奥、その唇に静かに笑みを刻む。

「恐れる事は無い。別に取って喰いはしないよ」

チラリ、と。微かに見えた赤い瞳が面白気に光を弾いた気がして。
少年はまるで己が馬鹿にされた様な気になって、恐れてなど居ないと証明する為に、些か乱暴な足取りで男の側に進んだ。
そんな少年に、男は耐え切れないとばかりに今度は声に出して笑う。
笑われた事に少年が頬を赤く染めれば、すまないと目元を拭いながら男が詫びた。

「君が余りに素直だから、微笑ましくてね」

落ち着いた声には、今だ笑の色が残っていたけれど。
それよりも、少年は目の前の男が存外若いという事に気をとられていた。
目元を拭った拍子にずれたローブから現れたのは、冷涼な面差しの18・9の青年で。
多めに見たって、せいぜいが20代前半だ。
醸し出す雰囲気から、もっと齢を重ねていると思っていたのに。
けれど、良く考えれば男の声は若い。
それで気付きそうな物なのに。

――不思議な、人だ・・・。

不思議と言えば、目の前の青年だけではなく、この場所もなのだけれど。

少年は、いつ此処へ来たのか、此処が何処なのかすら知らない。
分からないのだ。
ただ、気付いたら此処に居て、少年が気付く前から、青年は此処に居た。
分かるのは、その事だけ。

いや、違う。

もう一つだけ、分かる事。
それは、目の前の青年が、自分を傷付けるような事はしないという、絶対の自信。
これまでに会った事すらない、初対面の相手に何故そんな確信が出来るのか、少年には分からない。
けれど、確かに、それだけは少年の中で絶対なのだ。
青年に対する無条件の信頼。
それこそが、この良く分からない状況下にあって、少年が取り乱す事をせずに居られる所以なのだろう。

ただ、青年に対して恐怖は無いけれど。
その足元、ぽっかりと開いた黒い穴。それを覗く事が、少年には酷く恐ろしく感じられる。

ただの穴。そう言い切ってしまうには、この場所は何もかもが現実を離れすぎていた。
そう、いっそ不気味なほどに。

















・・・・・・・疲れた、進まない・・・・orz
気が向いたら、また続けます・・・。
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