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きれいなひと
幻:カ王...2006.02.28 Tue
笑う顔がきれい

困った顔がきれい

纏う空気がきれい

澄んだ瞳がきれい

俺の名前を呼ぶ声がきれい

硝子細工のような、何もかもがきれいなひと




・きれいなひと・




「また俺は留守番ですよー。今度こそは一緒に行きたかったのになぁ」

ちぇーっと拗ねてみせれば、目の前の人はクスクスと笑って。

「仕方ないよ、カイルは母上とリムを守るのが仕事。でしょ?」

ちょっと首を傾げて、覗き込むようにして真っ直ぐ見上げてくる蒼い瞳。
通常抱く青のイメージと違って、ちっとも冷たさなんて感じさせない柔らかい色。
それはきっと、この人だからだ。
穏やかで、優しくて。
周りの馬鹿な貴族連中に陰で何を言われても、いつだって穏やかに微笑んでる。
辛いなんて素振り、ちっとも見せないで。

綺麗な綺麗な王子様。
俺の、大切な大切な、何より守りたい人。
本当は、誰より傍で貴方の盾になりたいのに。
冗談みたいに王子の事が好きだと言って以来、何でか閣下が目を光らせていて必要以上に近寄らせて貰えない。

  あの人も結構親馬鹿だからなぁ…。

我ながら馬鹿な事をしてしまったとちょっと…いや、激しく後悔。
いつも傍に居る彼女が、ちょっと羨ましい。

「王子」

「うん?」

訂正。
いつもこの笑顔を向けられてる彼女が、かなり羨ましい。

「気をつけて行って来て下さいね」

「うん、大丈夫。ありがとう」

きれいな笑顔。
この笑顔が守れるなら、何だってするって思う。
貴方が笑っていてくれるなら、この気持ちだって一生告げずに抱えていく。

「本当に、気をつけてくださいよ。そんで早く帰ってきて下さい」

王子がいないと俺寂しくて死んじゃいますから。
情けない顔をして言えば、また冗談ばっかりって楽しそうに貴方が笑う。
本当は、冗談なんかじゃないんですよ。とは、言えないけど。

出来るだけ、早く帰ってきて下さい。
無事な姿を見て、安心させて。
そしてまた、こんな他愛も無い話をして、少しでも傍に居させてください。


祈るように、笑った。



・了・

初めてのカイル×王子がコレです、か…orz
もうひたすらに王子好き好き大好きなカイル。
そしてそれに気付いてない振りをする王子。
そして更にそれに気付いてるカイル。
そんでもって気づかれてる事に気付いてる王子。
そんな、カイル→←王子が、好きです。
一方通行両想い万歳。
惜しむらくはそれをあらわせない私の文才の無ささー!(泣
短文。
題/短文...2005.11.18 Fri
自作お題:吐き出す10の言の葉(9文字10WORD)使用。
ジャンルは色々。
消化済⇒(オリジナル)(??)(鋼錬)(リボーン)(逆裁)(Twelve)(隠王)(幻水)
未消化⇒9.10
※消化済一覧の番号クリックで同じ数字の題に飛べます。


1.敵だらけのこの世界 【オリジナル】2005.11.08

誰も信じない、そう言った眼差しは強く。
遠くを睨む横顔は、とても、哀しい。
世界は敵で溢れていて、味方なんて自分自身以外には居ないのだと、そう、君は言う。
そう、哀しい事を、口癖のように。
かける言葉もなく俯く僕は、本当は、君に言いたくて。
僕は、それでも僕は。
例え世界が敵だとしても、僕だけは君の味方でありたいと。
言いたいのに、言えない。
臆病な僕は、綺麗事だと笑われる事が怖くて、結局黙るしかない。
こんなに弱くては、君を守るなんて出来やしない。
僕には誰も守れない。
自分すら、守れない。
それが酷く哀しくて、悔しくて。
噛み締めた唇は、錆びた鉄の味がした。



2.欲しいと強く望む心 【????】2005.11.08

ソレが欲しいと思った。

穏やかに笑う、その全てを奪い尽くしたくなる程に。
強く、強く。
惹かれる、心。

優しい愛しかたなんて知らない。
乱暴に奪う事しか、自分は知らない。

手に入れたい。

けれど、それは駄目だと何処かから聞こえる声。
壊しては、いけないと。

大事にする方法なんて知らない。
どうすれば優しく出来るかなんて知らない。

だから、決めた。

手に入らなくてもいい、触れずに居る事を。



3.まどろみの中の永遠 【映画設定焔鋼】2005.11.14

夢の中でだけ、貴方に会える。

変わらない笑顔で、変わらない声で。
優しい手で触れて、名前を呼ぶ。
それは、切ない痛みを伴う刹那の幸福。

夢の中でだけ、貴方に会える。
夢の中でしか、貴方に会えない。

永遠ならいいのにと、苦く、思う。
それでは再び出会える可能性が消えてしまうよと、貴方の幻影が微笑む。
夢の中なのに、優しくないなと呟いて、それでも、それでこそ、この人だと思って。
目覚めを促す声に、別れの時間に、そっと、指先に触れる。
いつか、必ず。
夢ではなく、現で、と。

誓う
願う
切に
必ず、再び出会おうと。

それは、まどろみの中で交わした永遠の約束。



4.突き付けた銃口の先 【リボーン10年後設定獄ツナ】2005.11.14

乾いた音が響く。
呆気無い最期。
本当に呆気なく、トリガーに掛けた指先を引くだけで命は消えた。
命乞いの声は遠く、耳をすり抜けて。
飛び散った鮮やかな赤が、どす黒くなって心の底に沈殿する。

――汚れてしまった。

ただ、それだけをぼんやりと思った。

他に何も、思わない。
心は凍りついたように動かない。
目の前で、一つの命が消えたというのに。
この手で、ソレを奪ったというのに。

もう、何も、思えない。


ねぇ。


キミの目には、こんなオレはどう映るのかな。

今、君に酷く会いたくて、そして、君に会うことが、酷く恐ろしい。



5.僕の光はもう居ない 【逆裁】2005.11.14

ボクの目指したもの、追いかけたもの。
救えたと思った、けれど、それは傲慢だったと思い知らされた。
結局、ボクのこの手は君には届かず、詰めたと思った距離は、永遠に離されたまま。

泣く事すら出来なかった。
君を罵る言葉すら出ずに。
ただ、ただ。
自分を嘲って、哂った。

こんなものだ。
所詮、この想いは届かない。
自分のしたことは、君を追い詰めただけ。
空回りにも、程がある。

「馬鹿だ…ボクは…」

冷たい床に座り込んで、込み上げる哂いに顔を覆った。


ボクの光は、もういない。

自分自身の手で、消してしまった―…。



6.泡沫に消えたおもい 【Twelve:犬鳥前提兎→鳥】2005.11.18

好きだと言えないまま、手を振った。
名前を呼んだ自分に、振り返った貴方の笑顔が、綺麗だったから。
幸せそうに、幸せそうに笑う人。
何を考えているか分からない人の傍で、とても、幸せそうに笑うから。
自分の居場所は、貴方の隣には無いのだと、思い知らされて。
言えないまま、俯いて唇をかんで。
心配はさせたくなかったから、顔を上げて笑った。
追い掛けたい気持ちが無いわけじゃない、けれど。自分には、護らなければいけない人がいる。
そして、貴方には、あの人がいる。
どうにもなら無い現実も、気持ちも、とても苦しくて、痛い。
でも、貴方が幸せそうに笑うから。
だから、それで、いいと思った。
貴方が幸せなら、それでいい。
本当は、自分が幸せにしたかった。
自分に、その笑顔を向けて欲しかった。
でも、気付いたときには遅くて。
臆病で手を伸ばせなかった自分と、迷わずに手を伸ばしたあの人。
困ったように、けれど、嬉しそうに。
伸ばされた手をとった貴方。
選んだのは、他でもない、貴方だから。
だから、仕方が無いと自分に言い聞かせて。
本当は、あの人の何処が良いのか、全然分からないけれど。
本当に、全然、全くこれっぽっちも分からないけれど。
貴方が幸せなら、それでいい。

好きでした、誰よりも、ずっとずっと、本当に。

言えなかった言葉を、その姿が見えなくなってから、呟く。
誰にも聞こえない、届かない、最後の告白。


告げることの無かった淡い恋心は、朝霧の中で泡のように弾けて消えた。



7.暗闇に囚われた両目 【隠王:壬→宵】2005.11.18

僕は生きていない。

そう言う彼の瞳を見るのが嫌で、その言葉を聞きたくなくて。
言わせないと、無理やりその唇を塞いだ。

死ぬのが怖くないなんて言うな。
それじゃあ、この俺はどうなるの。
君が生きてないというのなら、その君に心を囚われた俺はどうなる?

最初に感じたのは恐怖。
逃げられない強さに、恐れを抱いた。
それは人間の本能。
次に抱いたのは、怒り、だったのかもしれない。
誰にも興味が無い振りをしていたって、所詮、それは振りで。
近しい人を傷付けられて、怒りを感じない人間なんて、早々居ない。
俺は、確かに恐れ、憤って居た筈で。
なのに、気付いたらその姿から目が離せなくなっていた。
得体の知れない相手に対する警戒からではなく、もっと、違う感情から。

漆黒の、闇のような君を目が追う。
人混みの中で、無意識にその姿を探してしまう。

会いたいと、そう、思ってしまう。

何事にも無関心を心がけていた俺が、
こんなにも、君に囚われているのに。
その君が、自分の存在を無かった事にしたいなんて、許されると思うの?

唇を離して、何をされたのか分からないという顔をしている相手に、暗く笑う。
悩めばいい。
もっと、俺のことでその心を埋め尽くして。
死んでも良いなんて、いえない位、俺に囚われて。

好きだなんて、言わないよ。

君が、この俺の闇に囚われて、逃げられなくなるまで――…。

壬晴の性格が違いすぎるヨ…orz


8.痛みがもたらすもの 【幻水:赤毛】2005.11.18

痛むのは、幼い心。
遠い昔に切り離した筈の、幼い心が痛いと泣く。


意地っ張りね、あなたは。

師の言葉に、鼻を鳴らす。
そんなんじゃない、そう言えば、素直じゃないんだからと返されて。
違うと言う。
関係ないと繰り返す。
アイツはもう、居ないと。
俺の兄貴だったアイツはもう死んでしまって、向こうに居るのは、もう、血の繋がりも何も無い赤の他人だと。
繰り返す。
言い聞かせる。

誰に?

キリリと、胸が痛む。
痛む筈なんて、無いのに。
そんなものは、当の昔に捨ててきたのに。
アイツが俺を捨てた、その時に。
兄を慕う幼い心は、殺した筈なのに。

忘れて、しまわないと。
暖かい記憶なんて。
優しかった誰かの、温かい手の感触なんて。
抱いていた想いも、何もかも。
全て、消してしまわないと。


痛くて、痛くて。

きっと、息が出来なくなる――…。




9.錆付いた扉を壊して


10.口先だけの脆い約束
音の無い世界
他...2005.11.08 Tue
止まってしまえば、きっとこんなに苦しくは無い。



・音の無い世界・


世界はさまざまな音で満ちていて、本当の静寂なんて、何処にもなくて。
けれど、聞こえない。
何処にも、居ない。
君の声、君の息、君の気配。
この世界の何処を探しても、見つけられない、君のオト。
足元が崩れていく感覚。
僕の世界を構成する全て、君に出会って、こんなにも脆くなっていたなんて。
君が居ない、それだけで、世界は音を消してしまう。
気が狂いそうな静寂の中で、君の名前を呼ぶ声さえ、響かない。
何処にも居ない、何処にも響かない。
届かない。
泣き叫ぶ、その声すら。

何処にも響かないのなら、いっそ・・・。




なんじゃこりゃー。
花も嵐も
12:犬鳥...2005.10.12 Wed
あなたとの恋は、穏やかさとは程遠い嵐――・・・



・花も嵐も・



怖そうな人。
(第一印象
強い人。
(初期印象

――――年寄りみたいな人。
(現在の印象


横暴なのも人の話をきかないのも、もう慣れたけど。

「――・・・だから、其処へ行くならあそこで曲がらなきゃ駄目だって、僕、何度も言いましたよね」

「そうだったか?」

「そうです。何度も何度も、分岐を通る前も通った後も、言いましたよ」

「まぁ間違ったものは仕方がない。戻るぞ」

「もど……って、そっちは森ですよ!?」

「馬鹿か貴様は。来た道を戻るよりも此処を抜けた方が早いに決まっているだろう」

「決まっているだろうって……」

一体何処からその自信が来るんだ、とか。
かつてそう言って何度も道に迷った事を忘れたのか、とか。
そもそも何でそんなに偉そうなのか、とか。
反論が山程ありすぎて、もう何処からつっこんで良いのか分からない。
自分の聞きたい事しか聞かない上に、興味の無い事や都合の悪い事はすぐに忘れる。

――僕、一体この人の何処が良かったんだろう…。

時折真剣に考えてしまう。
こんな、横暴で人の話を聞かない、何を考えてるんだか分からないボケ老人みたいな人。
本当に、何処が良かったのか。

「……自分で自分の趣味が分からない…」

「何か言ったか?」

「……(こういう時だけは聞いてるんだね…)」

考え直すなら今なんじゃないか、とか。
思うことは多いけど。

――結局、離れられないんだよなぁ…。

苦笑する。
最初は勢いと言うか、雰囲気というか。彼独特の強引さに流された感が無いわけではないけれど。
今となっては、こんな人でも一応大事な人で。
やる事なす事無茶苦茶で、穏やかさとは程遠い日常だけど。
それでも、全て愛しい日々。

あなたが居るから。


「ヒビキ?」

「……あなたの事が好きだなぁって、そう言ったんですよ」

「そういう事は聞こえる様に言わなければ意味がないだろう」

「はは…そうだね」

「…まぁいい。行くぞ」

差し出された手に軽く目を見張って、次いで笑ってその手を取る。
分かり辛い不器用な愛情表現が微笑ましくて、繋いだ手の温もりが愛しくて。
本当に、好き。そう呟けば、繋いだ手を強く握ってくれる。
この手があれば、あなたが居てくれれば。
何度道に迷っても、どんなに疲れても。
きっと、何処までも歩いていける。

――姉さんには趣味が悪いって、言われそうだけど。

いつか、自分の大切な片割れに紹介出来ればいい。
この人が、人生を共に歩む人だと。
口では反対しても、きっと彼女なら分かってくれる。
いつになるかは、分からないけれど。

けれど、その前に。

「ムメイさん、そっちは明らかに目的地と逆方向ですよっ!」


まずは、無事に森を抜ける事を考えないと…。





終わる!


ラブ米目指して見事敗退。
多分私はラブ米と言うものを勘違いして覚えている可能性が高い。
姉さん=ミノリちゃん。ウチでは双子設定。
ムッ様の呼び方はミツヒデさんじゃなくムメイさん推奨。
そして方向音痴。
タイトル意味なし。
一つの願い
幻:坊主...2005.10.04 Tue
貴方が居れば

君さえ居れば


全てを無くしても

他がどうなろうと


構わない…


けれど


それでも…




・一つの願い・




「カナギ…カナ…ねぇ、お願い…お姉ちゃ…って…お姉ちゃんって、呼んで…?」

腕の中で、奪われていく命。
熱を無くしていく義姉を、零れ落ちていく命を、留める術など知らなくて。
何が英雄だ、何が…。
たった一つの命も救えない、そんなちっぽけな自分が英雄?
笑わせるな。
こんな無力な人間を、盟主だ英雄だと祭り上げる連中の気が知れない。
大切な人を失って、立ち止まる事さえ赦されない。
泣く事さえ、出来ない。
そんなものが英雄だというのなら、姉が望むように、自分はただの『カナギ』で良かった。
最期の願いと、分った上で。それでも気丈に大丈夫だと口にする、たった一人の家族を見取る事しか出来ない。
そんな自分が、英雄だなんて…。

「ナナ…お姉ちゃん…」

僕は、貴女が姉で、良かったと。
告げてしまえば、訪れる喪失を、認めてしまうことになるから。
笑顔を、最期まで笑顔を絶やさない貴女に、出来る事と言えば、笑い返す事だけで。
せめて、この瞬間だけは。
今、だけは。
盟主でも、英雄でも無く。
ただの、何処にでも居る、少年として。
貴女の、弟として。
振舞う事は、赦されるだろうか‥。

「カナ…あたしは…あたしは大丈夫…。大丈夫だから…」

「ナナ…?」

「カナは…自分の望むように、生きなさい…。…型に、填る必要は無いの…。あんたは、あんたなんだから。どんな道を選んでも…何を、しても…あたしの…大事な、大事な、たった一人の…弟だよ…」

「…姉‥さん…」

「大丈夫…大丈夫だよ。誰が責めても、何を言われても…あたしだけは、カナの選択を‥生き方を、否定しないから…見守ってる、から…」

幸せになりなさい。
そう告げる少女は、大人の顔で。
血の気の引いた、白い顔に、白い手。
頬に触れる指先は、こんなにも冷たいのに。
心に触れる言葉は、どうして、こんなに…。

「大好きだよ…カナ…。あたしの‥大切な子‥…お願い‥します、ね…とーが‥さん…」

「承知した‥」

「‥トウガさん‥?」

義姉の視線の先、自分の背後に立つ人に、今更気付く。
何時の間に、そこに居たのだろう。
気付けなかった自分に、驚いて。
力ない義姉の指に代わり、その指がゆっくりと頬を拭う、その行為の意味を考えて、やっと。

「カナは意外に泣き虫だからね‥俺がしっかり、守るよ」

「ふふ‥良かった…」

自分が、涙を流している事に気付いた。

「この子ったら…自分が泣いている事にも‥気付けないの…あぶなっかしくて…放っておけない、でしょ…?」

「ナナミ、もう…」

それ以上は。
傷に障ると、止めようとした彼らの幼馴染を、視線で止める。
今しか告げられない。だから、彼女も、無理を押して言葉を紡いでいるのだ。
それが分っているから、カナギも何も言わずに聞いている。
分るだろう?と。
言葉に出さずに、告げて。
軍を引かせると去っていく背中を、最後まで見送らずに視線を二人に戻す。

「ありがと…とーがさん…」

「いや…他に、何か‥?」

「そ…だなぁ…。ね、カナ…最期に、約束して…。自分の、心に‥素直に生きなさいね…。カナの人生なんだから…周りに、合せちゃだめ…よ…?あんたが選んだものは…間違って無い……離しちゃ、駄目だからね…」

母の様な、子だと思う。
自分の命が消えていく事を知りながら、それでも、気丈に、ただ弟の事だけを案じ、その幸せを願う。
強い、少女だ。

「ジョウイには…あたしが謝っておいて、あげる…だから…安心して、その手を掴んで‥なさい…」

「ナナミ…知って…?」

「…ばかね…あたしは…カナのお姉ちゃん‥だよ‥?」

考えてる事位、分るわ。
そう、綺麗に微笑む少女は、何も知らない風に振舞いながら、自分の浅ましい願いも、カナギの決意も、知っていたと言外に告げて笑う。
知って居て尚、その選択は間違って居ないと。

「とーがさん…ありがと‥ございます…。もう、だいじょうぶ…言いたい事は、ぜんぶ…」

「…良いのかい?…後、少しくらいなら…」

「いいん、です…もうじゅうぶん…これ以上は…未練がのこっちゃう‥」

「ナナミ…?」

「カナ…強く、生きる事も大事だけど…時々は、休まなきゃ…だめよ……しあわせ‥に、ね…」

淡く笑って伸ばされた小さな手を、カナギがそっと掴む。
触れる事を恐れるように。
消え行く命を離すまいとするように。
祈るように、両手で包み込む。
それは、とても神聖な光景に思えた。
触れ合い、言葉にせずに最期の別れを交わす。
絆の深い二人だからこそ、そこにある静寂は痛い程綺麗で、哀しい。

そんな二人から、そっと一歩退いて。
目を閉じて、右手から力を抜く。
長引かせれば、それだけ彼女の苦痛も長くなるということ。
僅かな時は作れても、痛みが消せるわけではない。
自分に出来るのは、姉弟の別れの時を延ばすことだけ。
零れ落ちる命の速度を緩めることは出来ても、止める事は出来ない。

――結局、僕は無力だ…。

それでも。
少しは。ほんの少し位は、二人を救えただろうか。
力なく腕を落とした少女の寝顔は安らかで。
それを見つめる少年の横顔は、哀しみに彩られながらも穏やかで。
そこに、悲壮な空気はない。
その事に安堵する自分は、結局。二人を救う事で、自分も救われたかっただけなのかもしれないけれど。

「………トウガさん」

「何だい…?」

「有難う、御座いました…最期に、ちゃんと話、させて下さって」

「いや…」

泣き笑いの顔で言うカナギに、緩く首を振る。
ただの自己満足に、礼を言う必要はないと。
空けて居た距離を静かにつめて、そっと頭を自分の胸に引き寄せる。
人前でなけない少年が、泣けるように。
喪失は、どんな形であれ哀しい。
それが、大切な者であれば尚更。

過去の傷が、じくりと疼いて。抱き寄せる腕に力を込める。
静かに泣きながらしがみ付く少年の背を撫でながら、痛みに、一粒だけ涙を零した。



互いさえ居れば、他は何も要らないと切り捨てながら。
けれど、痛まない訳じゃない。
近しい相手を亡くすのは、いつだって痛い。

完全に切り捨てられる程、強くもなくて。

望むのは一人だけ。

何を捨てても欲しいのは、たった一人。

けれど。

でも。


こんな形で、失くしたかった訳じゃない。


関わる事がなくとも、幸せで居て欲しかった人達。


生きて、いて欲しかった・・・・。






おわったれ。


随分昔に書きかけてたのを見つけて、仕上げてみようなんて思ったものの、意味不明っぷりに拍車をかける結果に…。
いつものことですが、死にそうな人間はこんなに喋れないよなぁと、そんなセルフ突っ込みを入れながら書いてました。
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